色を塗ってデカールを貼ればハイ完成! ではないのです(その1)
例えば1/43の Lamborghini Aventador SVJ Roadster 2020 Ad Personam 2 tone paintの場合、ボディの彩色工程は10数過程にも及びます。塗装前の下地処理、下地塗装、基本色のパールホワイト、マスキング、さらに赤い部分のキャンディ塗装、デカールの貼り込み、デカールの保護や車体の鏡面仕上げのためのクリア塗装、表面研磨など1台1台、職人たちが丹精込めて作業を行っています。
メイクアップのモデルカーの多くはレジンで作られています。レジンはポタージュスープのような色をしているので、当然車体には色をつけなくてはなりません。モデルカーの世界では車体に色をつけることを「彩色」と表現することが多いですが、彩色には塗装の他、デカールを貼ったり、部品素材によってメッキをかけたりすることも含まれます。
今回はモデルカーの彩色の基本である塗装についてお話していきましょう。モデルカーの塗装には大きく分けて、吹き付け塗装と静電塗装の2タイプが存在します。
前者はスプレーガンを使って塗料を車体に吹き付けていくもの。後者は車体に電流(+)を流し、スプレーガン側にも電流(-)を流して塗料にも帯電させることで、静電気の力を利用して車体に塗料を密着させるものとなります。
静電塗装は大量生産のダイキャストミニカーで用いられることが多い塗装方法で、車体が金属製であることが必須となります。メイクアップのモデルカーはレジン製素材なので通電性が無く、静電塗装を用いることはまずありません。よってメイクアップの塗装イコール、吹き付け塗装ということになります。
左:吹き付け塗装 右:バリ取り
塗装を行うためには最初に下地処理を行う必要があります。シリコン型から取り出した部品は直ぐに組み立てることも、塗装することはできません。
初めに「バリ取り」と呼ばれる作業を行います。型はどうしても上下型が密着し切れていない部分、すなわち隙間が生じます。隙間にトロトロのレジンが流れ込むと本来想定していない余剰部分に隙間形状の不要部位ができてしまいます。これをバリと呼びます。同じ型を使っていても、必ずしも同じ個所にバリが出来るわけではないので、全数職人がチェックして、バリを刃物やヤスリで丁寧に除去します。
場合によってはトロトロに溶けたレジンの中に空気が含有し、気泡となってしまうことがあり、それがレジンの硬化後に穴、ピンホールとなって残ってしまうことが稀にありますが、これもまた全数チェックを行い、見つかった場合は穴埋め処置を施します。
これらが終わると今度は部品の洗浄です。洗浄するのは何か目に見えた汚れがあるというわけではなく、パーツの成型の際に型から部品離れをよくするために塗布する離型剤の除去が一番の目的となります。離型剤が部品表面に付着したままですと、塗料がはじかれたりする可能性が大きいため慎重に行います。
01 鋳造後すぐの状態
シリコン型から取り出したままのボディ。窓のオープニング部分などにバリが残っています。
02 クリーンナップ
バリ取りの他、稀に存在する気泡などによる穴など、不良部分は塗装前に完全にリペアしておきます。
キャスティング時に変形しやすい部分には補強用の柱があるため、きれいに取り除きます。
03 下地処理
塗料のアシ付け、鋳造後の微細な面の荒れなどを整える下地塗料(サフェーサー)を満遍なく塗布しておきます。
text : Makoto Ukai