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  • 色を塗ってデカールを貼ればハイ完成! ではないのです(その3)

    ボディカラーの塗装が終わったら、今度はこのアヴェンタドールの場合であればブラックのAピラーなどをマスキングして塗装します(ボディにデカールを貼る必要が無い場合は、この上に仕上げのクリアコーティングを施せば、磨き工程を経て完成となります)。 ボディカラーを塗装後、このアヴェンタドールの場合であれば、赤、白、金のラインに加えて、カーボンパーツ部分の表現にデカールを使用します。デカールは基本は二次平面なので、三次曲面にシワなく貼り込むには、デカール自体を特殊な溶剤で軟化させて伸ばしたり、あるいは分割するなど種々の手法を組み合わせることによって対処しています。 デカールを貼り終わったら、最後はその上から透明のウレタン塗料でコーティングを行います。コーティングは1層吹くごとに手作業でボディ表面の研磨作業を行い、これを数回繰り返すことによってデカール面とボディ塗装面の段差が全くない鏡面仕上げが可能となるのです。 世の中のモデルカーの多くはデカールを貼った上にオーバーコートを行うのは稀。その理由としてはデカールとボディの間に気泡が入ったままオーバーコートすると、オーバーコート塗膜下のデカールが膨れ上がったり、シワが寄ったりするトラブルを起こす可能性が高いためです。万が一、そうした失敗があった場合はリカバリーも難しく、無論商品にならず廃棄処分となるので、リスクも大きいということになります。 この後、ボディ表面を傷めないようにすべてのパーツを組み上げれば、モデルカーは完成するのです。このアヴェンタドールの場合、塗り重ねの多い箇所で8コートあります。 11 細部の塗り分け コチラのモデルではAピラー部分がツヤ消しブラックなので、当該部分を露出させてそれ以外は覆うようにマスキング。 12 細部の塗り分け完成 塗装後マスキングを剥がすとご覧のようにAピラー部分がブラックアウトされています。一気にクルマらしくなります。 13 デカール貼り こちらのモデルでは赤、白の他、金色のライン、カーボン部位がありますが、それらはデカールを貼り込むことで再現します。 14 クリアーコート 金色ラインとカーボン部分のデカールを貼り込んだら、仕上げにウレタン塗料でクリアーコートを施します。 15 フィニッシュ すべての塗装が完了したら、表面研磨を行って鏡面状態に仕上げます。さらにパーツを組み込んで完成となります。 text : Makoto Ukai

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  • 色を塗ってデカールを貼ればハイ完成! ではないのです(その2)

    バリ取りやピンホールの穴埋め、洗浄などを行って下地処理が完了したレジン製部品は塗装を施していきます。と言っても、いきなりボディ色を塗り、それで完成というわけには行かず、何層も様々な塗料を塗り、塗料の層の間にデカールを貼り、研磨を行ったりという作業をすべて1個1個職人の手で行います。 いずれの工程も「効率」を追求すれば精度は下がり、当然クオリティを大きく左右する部分ですので妥協を許しませんが、それが故に製造コストが嵩み、製品価格に占める割合も非常に大きなものとなります。メイクアップのモデルカーは決して安いものではありませんが、塗装を含めた彩色へのこだわりに、その一番の理由と魅力が込められていると考えていただいても良いかもしれません。 左:バリ取り、下処理作業 右:クリアー塗装前の下処理作業 細かい工程については割愛しますが、下地処理後、最初にプライマー/サフェーサーを吹き付けます。プライマー/サフェーサーは、バリ取り作業などでついた細かなヤスリ目やキズを埋めるといった目留めの効果に加えて、塗装の密着性や食いつきを良くするというメリットがあります。 続いて実車で言うところの外板色(ボディカラー)を塗装します。色の塗り分けがある場合は、より薄い色の方を先に塗り、マスキングしてから濃い色を吹き付けます。塗り分けに関してはデカールで行う場合と塗装で行う場合、あるいは両方を併用する場合があります。ここにサンプルとして採り上げたアヴェンタドールは両者を併用しています。 塗り方に関しても赤や黒といったソリッドカラーは1度の吹きつけでも発色しますが、黄色などは塗りムラが出やすい上に、下地の隠ぺい力が低いので数回の吹き付けが必要になります。また、シルバーやゴールドを下地にクリアレッドをオーバーコートして深みのあるメタリックレッドを表現するキャンディ塗装など実車の雰囲気に合わせた塗装方法を駆使しています。 塗り分けの場合は塗りたい部分とそうでない箇所を覆う、マスキング作業が必要になります。しかし、1台1台、職人が目分量で立体物をマスキングしていくのは困難な上に、仕上がりにバラつきがでてしまいます。それを防ぐためにメイクアップの製品で外板色の塗り分けの必要性が生じる場合は、その境界線を原型にあらかじめ凹みモールドで刻んでおく工夫を凝らしてあります。 04 下塗り このモデルは基本色がホワイトパールなので、まずはソリッドのホワイトをしっかりと乗せておきます。 05 パール塗装 ホワイトの上に、光をキラキラと反射させる微細な粒子の入った透明なパールコートを吹き付けます。 06 パール塗装の保護 パール塗料は粒子が大きめなこともあって、若干表面に凹凸が出ます。表面を平滑にするためにクリアーコートを施す。 07 キャンディ塗装の準備 次いで、赤で塗り分ける部分を残してマスキング。ガイド用にボディ側に塗り分け線がモールドされています。 08 キャンディ塗装の下地 メタリック地の上にカラークリアを塗り重ねることで飴のような質感を見せるキャンディ塗装。下地に銀を吹きます。 ※実際はマスキングしたまま作業は続きます。 09 キャンディ塗装をオーバーコート シルバーの上に、クリアーレッドを塗り重ねると、粒子がギラつかないしっとりとしたメタリック調のレッドになります。 ※実際はマスキングしたまま作業は続きます 10 ボディ全体の質感を整える パール塗装、キャンディ塗装を塗り分けたら、マスキングを剥がして、ボディ全体にクリアーコートを施します。 text : Makoto Ukai

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  • 色を塗ってデカールを貼ればハイ完成! ではないのです(その1)

    例えば1/43の Lamborghini Aventador SVJ Roadster 2020 Ad Personam 2 tone paintの場合、ボディの彩色工程は10数過程にも及びます。塗装前の下地処理、下地塗装、基本色のパールホワイト、マスキング、さらに赤い部分のキャンディ塗装、デカールの貼り込み、デカールの保護や車体の鏡面仕上げのためのクリア塗装、表面研磨など1台1台、職人たちが丹精込めて作業を行っています。 メイクアップのモデルカーの多くはレジンで作られています。レジンはポタージュスープのような色をしているので、当然車体には色をつけなくてはなりません。モデルカーの世界では車体に色をつけることを「彩色」と表現することが多いですが、彩色には塗装の他、デカールを貼ったり、部品素材によってメッキをかけたりすることも含まれます。 今回はモデルカーの彩色の基本である塗装についてお話していきましょう。モデルカーの塗装には大きく分けて、吹き付け塗装と静電塗装の2タイプが存在します。 前者はスプレーガンを使って塗料を車体に吹き付けていくもの。後者は車体に電流(+)を流し、スプレーガン側にも電流(-)を流して塗料にも帯電させることで、静電気の力を利用して車体に塗料を密着させるものとなります。 静電塗装は大量生産のダイキャストミニカーで用いられることが多い塗装方法で、車体が金属製であることが必須となります。メイクアップのモデルカーはレジン製素材なので通電性が無く、静電塗装を用いることはまずありません。よってメイクアップの塗装イコール、吹き付け塗装ということになります。 左:吹き付け塗装 右:バリ取り 塗装を行うためには最初に下地処理を行う必要があります。シリコン型から取り出した部品は直ぐに組み立てることも、塗装することはできません。 初めに「バリ取り」と呼ばれる作業を行います。型はどうしても上下型が密着し切れていない部分、すなわち隙間が生じます。隙間にトロトロのレジンが流れ込むと本来想定していない余剰部分に隙間形状の不要部位ができてしまいます。これをバリと呼びます。同じ型を使っていても、必ずしも同じ個所にバリが出来るわけではないので、全数職人がチェックして、バリを刃物やヤスリで丁寧に除去します。 場合によってはトロトロに溶けたレジンの中に空気が含有し、気泡となってしまうことがあり、それがレジンの硬化後に穴、ピンホールとなって残ってしまうことが稀にありますが、これもまた全数チェックを行い、見つかった場合は穴埋め処置を施します。 これらが終わると今度は部品の洗浄です。洗浄するのは何か目に見えた汚れがあるというわけではなく、パーツの成型の際に型から部品離れをよくするために塗布する離型剤の除去が一番の目的となります。離型剤が部品表面に付着したままですと、塗料がはじかれたりする可能性が大きいため慎重に行います。 01 鋳造後すぐの状態 シリコン型から取り出したままのボディ。窓のオープニング部分などにバリが残っています。 02 クリーンナップ バリ取りの他、稀に存在する気泡などによる穴など、不良部分は塗装前に完全にリペアしておきます。 キャスティング時に変形しやすい部分には補強用の柱があるため、きれいに取り除きます。 03 下地処理 塗料のアシ付け、鋳造後の微細な面の荒れなどを整える下地塗料(サフェーサー)を満遍なく塗布しておきます。 text : Makoto Ukai

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  • わかっていそうでわかっていない原型の話(その3)

    これまではモデルカーの原型(マスター)について書いてきましたが、ここからはそのマスターをいかにして生産用のシリコン型に置き換えるかについて説明していきます。ここではあくまでボディに限った話となりますが、細かな内外装パーツも概ね同じような手法で生産用の型を製作していきます。 左:スキャンデータ(赤い部分) 右:設計データ 一番最初のステップとして実物の3Dスキャン、あるいは自動車メーカーから提供を受けた実車の設計データ(模型用に必要な情報を抽出する必要があります)を元に3D CADで原型データを設計します。これを3Dプリンターで出力したものがマスターとなります。 修正済ボディマスター(3Dプリントしたマスターの積層跡を消したり、パネルラインなどの微調整は手作業) マスターを出力したら、次にそれを複製するためのメス型を作るための作業に入ります。と言っても、マスターから型を作り、その型で生産するわけではなく、型のまた複製を作ってそれで生産を行う方法を採ります。 型の製作は原型側にも負担がかかり、それを幾度も繰り返すと原型が破損する可能性もあるので、そのリスクヘッジが目的となります。 2次原型製作用のシリコン型 マスター(オス型)はまず生産用の2次原型(オス型:通称インショウ型)を製作するために、シリコン製のメス型に置き換えます。メス型は基本的に上下2分割となっており、逆に言えばクルマのボディを上下2分割して、なおかつ型から複雑な形状のボディが抜けるように造形しなくてはなりません。メス型は手作業で製作します。ボディの外形はトロトロのシリコンの中に漬け込んで、シリコンの硬化を待てば凹凸が逆転したメス型が出来あがることはイメージしていたけると思います。大まかなイメージではたい焼きがマスターで、焼き型がシリコン型となります。 しかし、モデルカーはたい焼きと違って例えばボディサイドのダクトや窓の抜けなど、中身が刳り抜かれ、側面部分にもモールドがあります。そのため単純にボディを上下2分割しただけでは型から成型したボディを外すことができず、型から成型物(≒ボディ)を取り外しやすい部分で型を分割する必要性が出てきます。 この型の分割線をパーティングラインと言います。型自体はシリコン製で、こじったり広げたりして成型物を取り外すことはできますが、それでもパーティングラインの設定は重要となるのです。 マスターと粘土の境目がパーティングラインになる パーティングラインは成型物にも型の“合わせ目”として残ってしまうので、後処理も可能ですが、なるべくその必要がないような目立たない部分(サイドシル下など)に入るのが理想です。パーティングラインやボディ内側の肉抜きなどの設定は、硬化する粘土を盛って職人が手作業で行います。 ①:粘土を盛ったマスターにシリコンを流し硬化させたもの ②:土台(アルミ)を取り外し、粘土を取り除く ③:マスターはそのままでさらにシリコンを流し込む ④:③のシリコン型を取り外し、マスターを取り除くと2次原型作成用のシリコン型ができあがる これで言わばオス型の原型(マスター)に次いでメス型のシリコン製マスターが完成したことになります。このシリコン製マスターを使って、今度は生産用の原型(インショウ型)を作ります。インショウ型に関しては材料を生産用のレジンではなく、収縮もなく硬度も高いレプロスロー(2液硬化のポリウレタン樹脂)で製作します。 生産用シリコン型を複製するためのインショウ型 ④のシリコン型にレプロスローを流し込んで作る 今度はインショウ型を使って生産用のシリコン型を複製します。生産用のシリコン型にレジンを流し込んで硬化させればモデルカーの量産が行えることになります。シリコン型は何度も成型を繰り返すと型が破断・欠損するため、メイクアップでは12台成型したら新しい型に取り換える方式を採っています。 余談ですが、例えばメイクアップのように0.3mmの深いパネルライン(溝)を刻んだボディを成型しようとすれば、型側には0.3mm以下の凸状のリブを設ける必要がありますが、これが少しでも欠損すれば溝が埋まり、ボディ側のパネルラインが分断することになります。型の耐性を上げようとすれば、パネルラインを太く浅くすれば良いわけで、また型が長持ち(ひとつの型でたくさんのボディを成型できる)することによってコストダウンを図れます。しかし、メイクアップではコストよりもモデルカーの精緻さを追求しているのです。 一概には言えませんが、レジン製のミニカーの原型の拘りを感じ取る基準として、“深く細いパネルライン”というのはひとつのポイントになるかもしれません。 text : Makoto Ukai

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  • わかっていそうでわかっていない原型の話(その2)

    今から20年ほど前までは、事前に2次元で図面を引いて、それを元に原型師が無垢のケミカルウッドを削り出して原型を製作していました。様々な工具や測定機などを用いながら製作するので、手作業とは言え左右も対称ですが、ボディの面表現やプレスラインの深さなどは原型師の感性によるところが大きく、同じ車種であってもモデルカーメーカーによって違いがあり、それが“アジ”と表現されることもありました。 メイクアップではその後、3D CADで図面を作成し、それをNC旋盤で読み込んで切削で原型を製作している時期もありました。しかしNC旋盤の場合は切削する対象物に対して刃の角度が90度方向にしか入らないため、クルマのボディ形状を削り出すには、対象物を都度都度刃の向きに合わせて回転させなければならず、また場合によってはボディの原型を何分割にもして削り出す必要があるなど、形状の再現性はともかく、効率面でのメリットは多くありませんでした。 NC切削ではダクトやヘッドライトなど削れない箇所は分割し、あとからパーツを接着していた 現在は3D CADで原型を設計し、それを3Dプリンターで出力したものをマスター(一次原型)としています。とは言え3Dプリンターも5~6年前まではまだ万能とは言えず、積層跡がクッキリと残るために、それらを消去するために人間の手でやすり掛けを行ったり、あるいはその最中に失われたプレスラインのエッジを彫り直すなど、出力したものをそのまま原型に用いることはできませんでした。ところが現在では3Dプリンターの進化によって積層跡もほぼなくなり、ごくわずかな手直しでマスターとして使用できるようになりました。 複雑な造形でも3Dプリンターであれば、パーツを分割することなくつくれる 今後も3Dプリンターの進化によって原型(マスター)の精度はますます向上していくと思われます。さらに進化が続けば、現在は原型から手作業で行っている生産型への置き換えは無くなり、型自体の原型を3Dプリンターで出力する時代がくるかもしれません。 複数のパーツを一度にプリントアウトすることができるので、原型製作の時間を短縮できる しかし、3Dスキャンや3D CAD設計が進化しても、例えばスケールに合わせた的確な面表現や省略すべきディテールなど、現時点ではまだまだAI(人工知能)では判断できない領域の作業はモデルカーの設計の過程には多く、エンジニアの感性や観察眼がモノを言うフェイズが続くことでしょう。 text : Makoto Ukai

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  • わかっていそうでわかっていない原型の話(その1)

    モデルカーの製造にあたって、無くてはならないのが原型です。おそらく多くの方が、原型をオス型として、それを乾くと固まる粘土のようなものに埋め込んでメス型を作り、そこにレジンを流し込んで複製してモデルカーの部品が作られていると考えられているのではないでしょうか。 部品によってはそれは間違いではありませんが、ボディなどの複雑な形状をした部品に関してはそう簡単にはいきません。たとえば、多くの方が幼少期に遊んだであろう、スーパーカー消しゴムのようなものであれば、その製法でも生産は可能です。なぜならスーパーカー消しゴムは無垢のゴムの塊で窓もタイヤも灯火類もすべて一体成型されているからです。 ところが、メイクアップのモデルカーのように、窓は別パーツで、タイヤも別パーツ、そしてインテリアも再現するとなると、必然的にレジンの塊ではボディとして成立せず、「中身を刳りぬく」必要性が出てくることになります。そのために型は「ボディの外観を再現するための役割」と「ボディの内側を刳りぬく」というふたつの役割を担うことになるのです。 詳しくはその2,その3で解説 そのふたつの型を組み合わせた時に出来る「隙間」がレジンの「通り道」となって、レジンの乾燥後の成型物が出来上がります。その通り道は成型物にもなりますが、文字通りトロトロに溶けたレジンがスムーズに行きわたるための通り道としても設計しなければなりません。レジンが綺麗に流れ込まないと、成型不良となってボディ側に欠損や、穴が開いたりすることはイメージしていただけると思います。 3D CAD設計では断面などの確認がしやすい 以前は原型師が切削性に優れたケミカルウッドに加工を加えて無垢の原型を作り、その内側を手作業で繰り抜いて……と言った気の遠くなるような作業が行われていました。一方、現在は3D CADで原型を設計するために、ボディの肉厚や裏側のディテールなども一度に設計でき、それを3Dプリンターで出力したものが原型となります。そのため成型物(レジンの通り道)も事前に形状を把握してシミュレーションできるので、かつての手原型の時代のように、成型用の型を作ってみたは良いものの、いざレジンを流しこんだら、その通り道が確保されておらず成型不良が頻発したといったトラブルは未然に防げるようなりました 3D CAD設計になっての弊害をよく尋ねられますが、モデルカーに関していえば、それはゼロと言っても過言ではなく、開発期間の短縮や、均一なクオリティ、そして正確なプロポーション表現など、数多くのメリットがもたらされています。 text : Makoto Ukai

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  • メイクアップのモデルカーのこだわり(ホワイトメタルパーツ)

    メイクアップのモデルカーの特徴のひとつにホワイトメタル製パーツの使用が挙げられます。ホワイトメタルは錫や鉛、亜鉛などから構成される金属で、融点が低く鋳造のし易さから小さな部品の成型に向いています。またレジンよりも剛性が高いため、例えばホイールの繊細なスポーク表現なども向いています。 ゴム型を回転させて溶かしたメタルを流し込むため、原型を円状に配置 気泡などが入らないように流路を工夫し製作 ホワイトメタル製部品もレジン同様にトロトロに溶かしたホワイトメタルを、硬いゴム製の雌型に遠心力を使って隅々まで流し込み、その硬化後、型から成型物を型から取り出すことで製造します。 原型は細密なモールドを行うことができ、さらに強度も確保できることから真鍮を使用し、その製作は旋盤を使って切削で行います。また、ゴム製の雌型を作る際、原型自体にも強度が求められることから真鍮を用いています。 鋳造後はバリなどの不要部を除去、歪みなどを細かくチェック ホワイトメタルは成型後の部品を磨いてもメッキのようなツヤは出ますが、表面処理をしなければすぐ表面が酸化してツヤは鈍化してしまいます。そこで弊社の場合、ホワイトメタル製部品の多くは上からクロームメッキ処理を施します。 レジンやプラスチックにもメッキ処理はできますが、基本的にそれらは蒸着メッキといって、塗装に近いものである上に、その下地にプライマーコートなどを施す必要があるため、どうしても厚ぼったく見えてしまいます。 1/43といった小スケールでは、メッキの厚ぼったさはリアリティを一気に低下させてしまいます。ホワイトメタルの場合は実車のメッキと同様に、電気を使ってホワイトメタル表面を鏡面に変化させているため、シャープ、かつ深みのあるツヤを湛えることが可能になります。また、メッキを施すことによって、ホワイトメタル製部品の強度も向上します。輝きと強度の両立という意味で、メッキは非常に有効であることがお分かりいただけると思います。 またメッキと言えば、弊社では窓枠などにエッチングパーツを利用する際にも同様の処理を施しています。エッチングパーツは、そのままでもかなり輝度が高いため、メーカーによってはクロームの窓枠表現に、エッチングパーツをそのまま貼り込んで使用しているところもありますが、より実車に印象を近づけたいと思ったときに、やはりエッチングパーツのままでは、風合いが異なります。しかし、エッチングパーツはステンレスなので通電せず、いわゆるメッキ処理が施せません。そのため、エッチングパーツの表面をメッキで覆うために、まずエッチングパーツの表面に銅のコーティングを行います。これによって通電が可能となり、深みある輝きも美しい、実車のような窓枠表現が可能になっているのです。 text : Makoto Ukai

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  • メイクアップのモデルカーのこだわり(レジンパーツ)

    メイクアップのミニカーは素材にレジンを用いています。レジンは実車に忠実なプロポーションやディテールの再現に適していますが、数少ない弱点のひとつとして、型の耐久性の低さが挙げられます。レジン製モデルカーは原型が出来ると、それを雄型として、複製用の雌型を作ります。タイ焼きに例えれば、タイ焼きが雄型、焼き機が雌型ということになりますが、実は“硬さ”という面ではまったく逆の関係になります。硬い鉄製の焼き器を使って、柔らかいタイ焼きが焼き上がるのに対して、レジン製モデルカーは柔らかいシリコン製の雌型にトロトロに溶かしたレジンを流し込み、レジンが固まるのを待ってから雌型を引きはがすことで部品が成型されます。 型が柔らかいということは、たとえばエアインテークやドアラインなど、かなり入りくんだ部分でもレジンが行きわたりさえすれば、型を引きはがしたり引き抜いたりできれば成型できるということになります。 しかし、型が柔らかくて成型の自由度が高い反面、型の耐久性は低く、クオリティにこだわれば、ひとつの型で成型できる部品の数は限界があり、数多く製品を作るためには大量のシリコン型が必要になります。 例えば、弊社のモデルカーのパネルライン(ドアやボンネットの分割線)は0.3mm幅ですが、0.3mmの凹ラインを再現するためには、シリコン型側には0.3mmの凸モールドが必要となりますが、成型物から何度もシリコン型を引きはがしていると、その凸モールドが欠損し易いことはご想像いただけると思います。 そのため、弊社ではひとつのシリコン型で成型する部品は10個程度にとどめています。メーカーによっては、同じシリコン型で数十個、数百個の部品を成型するところもありますが、型側の耐久性を上げるためには繊細な表現はある程度妥協する必要もあるはずです。繊細な表現や彫刻にこだわればこだわるほど、シリコン型はより繊細な凹凸が必要とされることになり、その分型自体の剛性が低下し破損し易くなり、生産性は下がりコストもかかります。輪郭のクッキリとしたタイ焼きを作り続けるためには、焼き機の方を使い捨て感覚で替えていかなければならない、そうイメージしていただくのがわかりやすいかもしれません。 キャスティング後は成型に不具合がないか確認、不要部分を削り出す作業 成形物の表面に開いてしまう極小の穴をパテなどで埋める作業 text : Makoto Ukai

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  • メイクアップのモデルカーはなぜレジン製なのか

    レジン製モデルカーが広く認知されるようになったのは、今から30年ほど前のこと。それ以前は少量生産のモデルカーの多くはホワイトメタル・鋳造製でした。一方で大量生産をする場合は、高価な金型を別途製作し、トロトロに溶かした金属を高圧で金型内に注入して部品を成型するインジェクション成型のダイキャスト製が古くから主流となっていました。 3Dプリンター出力原型 話を少量生産に限定すれば、モデルカーの素材としてはレジンとホワイトメタルのふたつの選択肢があり、現在はレジン製が多数派で、ホワイトメタル製はシュリンク傾向にあります。その理由は簡単に言えば、原型製作の “し易さ” にあります。レジンは現在もっとも進んだフェイズでは、3D CADで設計した原型を3Dプリンターで出力する方法がありますが、ホワイトメタルは原型を真鍮を切削して製作する必要があり、時間もコストもかかります。ホワイトメタル製品の原型を製作するには高いスキルが必要で、それはかつて彫金師にも匹敵する技術が必要と言われるほどでした。 ケミカルウッド原型 レジン製モデルカーもかつては原型師が手作業でマスターをスクラッチすることもありましたが、その多くはケミカル(サイコ)ウッドなど、加工のし易い材料が用いられていたこともあり、ホワイトメタル製品の原型よりは製作は容易となります。と、ここまで書くと今日のレジン製モデルカーの製作がデジタル作業の産物とも受け止められかねませんが、実際にメイクアップでは3Dプリンターの出力品がそのまま原型になるわけではなく、例えばパネルラインのスジ彫りや微細な面表現のアールなどは手作業で修正を加えています。レジン製モデルは原型がそのままマスターとなるので、いい意味でデジタルとアナログのシナジーを活用することができます。 手作業によるスジ彫りや細かい造形の修正 ダイキャスト製品などは、そうした微細な面の修正や、ドアラインの深さなどを求めると、高価な金型の方を設計し直す、あるいは金型の方に金属を盛ったり、削ったりとコストも時間も必要となるため、小回りが利きません。そういう意味でも、気に入らない部分を速やかに修正し、なおかつ商品化までの時間を短縮できるということからメイクアップではレジンをミニカーの材質に用いています。また、車体の意匠の一部を変更して、例えば実車の後期型と前期型を作り分けたい、といったバリエーション展開を行う場合も、ダイキャスト製は金型を作り分けたり、また金型の入れ子(コマ)を交換できるように設計する必要があるなど大掛かりな作業が必要となりますが、レジン製の場合は原型の加修も容易なため、かなり小回りの利く対応が可能になります。 実はメイクアップは1980年代後半から1990年代中盤にかけて、ロストワックス製法やプレスで加工した真鍮をボディやフレーム素材に用いたスーペリアモデルというラインの商品もリリースしており、精密なメカニズムを内蔵しつつ、それを覆うボディは薄く実車のような風合いを見せるとあって非常にご好評をいただきましたが、非常に高価な製品となったため、現在は製造を行っていません。良い製品を皆様にお求めやすい価格で提供したい、そんな思いからも現在はレジン製モデルの品質向上に最善を尽くしています。 text : Makoto Ukai

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